Partager

心野さんのココロノさん 〜青春を取り戻したい少女が『世界』を創り出すまでのちょっと不思議なラブコメ〜
心野さんのココロノさん 〜青春を取り戻したい少女が『世界』を創り出すまでのちょっと不思議なラブコメ〜
Auteur: 十色

第1話 但木くんと心野さん

Auteur: 十色
last update Date de publication: 2026-07-08 10:47:56

 僕は女の子が苦手だ。

 いや、苦手というレベルの話ではないかもしれない。いわゆる女性恐怖症というやつだ。

 そりゃそうだ、『あんな出来事』を経験をしてしまったら。

 どうして僕が女の子に対して苦手意識を持つことになってしまったのか、今は言いたくない。思い出したくないんだ、当時のことを。

 「はあ……高校生になれば多少はマシになると思ったんだけど、甘かった」

 今にも空気の中に消えてしまいそうなくらい、小さく呟いた。そして、深い溜息をひとつ。

(これじゃ、中学の頃と全く変わらないじゃないか)

 高校に入学して早一ヶ月が経とうとしているけど、相変わらず女子とは会話をしたことがない。

 いや、できないんだ。

 でも、そういえば一度だけあるか。「消しゴム落としましたよ?」って、隣の席の女子に声をかけてもらったっけ。

 会話って、何さ。

「ああ、もう嫌だ……」と、僕は頭を抱えながら一人ごちる。

 でも悪いことばかりではない。ちょっとだけいいことがあった。この前の席替えで、窓際の隅の席をゲットすることができたんだ。

 やっぱり隅っこは落ち着く。外の景色も見ることができるし。それに、授業中に居眠りをしてもバレにくい。隅っこ最高。

 だけど、僕にとってこの席替えで良かったと思う理由はもうひとつあった。

 チラリ、と隣の席を見やった。うん、やっぱり落ち着く。

 僕の隣に座っている女の子。名前は心野雫さん。

 なんだか彼女を見ていると、とても落ち着くんだ。理由は簡単であり、シンプルであり、明白。失礼を承知で言ってしまうと、僕と同類なんじゃないかなと思えて仕方がないんだ。何故か妙に親近感が湧くというか。

 心野さんはとても大人しい人――いや、大人しいどころじゃないか。高校生になってから、心野さんがクラスメイトと一緒にいるところも、喋っているところも見たことがない。こんな僕でさえ、一応男友達くらいはいるのに。

(心野さん、どういう顔をしてるんだろう)

 彼女は伸び切った前髪を下ろしていつも顔を隠してしまっている。他の女子と比べてスカートの丈も長いし、制服も着崩したりはしないし。これもちょっと失礼だけど、地味子ちゃんという言葉がしっくりくる。そんな女の子だ。

(はあー、一度でいいから話してみたいな)

 女の子が苦手な僕だけど、不思議と心野さんとは喋ってみたいと思えてくる。それに、女性恐怖症克服のためにも、まずは心野さんと友達になりたい。そんな気持ちが自然と湧いてくる。

 僕の名前は但木勇気。その名に恥じぬよう、勇気を出す時が来たのかもしれない。

 だから僕は今朝、登校しながら決意をした。今日こそ心野さんに話しかけてみよう、と。だけど喋ることを拒否されたらどうしようだとか、そんなネガティブなことばかり考えてしまう。それに、話しかけても絶対に喋ってもらえないはず。

 だって、これまで幾人かのクラスメイトから話しかけられても言葉を発することなく、ただただ頷いたりするだけだったから。だから僕が話しかけても同じ結果になってしまうことだろう。

 それに、女性恐怖症である僕はやっぱり女子に話しかけるのは、なんだかんだ言っても怖い。

 でも――

(いや、自分を信じろ!  但木勇気!  大丈夫。きっと大丈夫。心野さんはちゃんと何かしらのアクションは起こしてくれるはず。確かに普通に会話ができるようになるまでには時間がかかるかもしれない。長期戦になるに違いない。でも、それは重々承知の上だ)

 そうだ。悩んでいても仕方がない。まずは行動を起こさないと何も始まらない。そうしなければ、僕は一生女性恐怖症を抱えたまま人生を終えてしまうことだろう。

 それに、高校生活でも、中学の頃のように女子に対してびくびくするつもりか? 否。そんなことは望んでいない。

 自分を変えられるのは、自分自身だ。

 こうなったら、もう勢いに任せて話しかけてやる!

「ね、ね、ねねね、ねえ、こ、心野さん? ちょ、ちょ、ちょっといいかな?」

「ヒ、ヒイッ!!!!」

 話しかけたその瞬間、心野さんは驚きの声を上げ、そして椅子に座った姿勢のまま飛び上がってしまった。『お尻が浮く』という言葉は知っているけど、本当に浮くんだ……初めて見たよ。それに、僕もやっぱりキョドってしまった。まるで針の壊れたレコードみたいに。

 でも――

「な、なななな、なんでしょうか!」

(え!? う、 嘘……だろ!?)

 心野さんが、僕に返事を返してくれた。

 初めて聞いた、心野さんの声。僕と同様、キョドりすぎではあるけど。でも、言葉を返してくれただけでも驚きだった。しっかりとコミュニケーションを取れるまでには絶対に時間がかかると思っていた。

 なのに、どうして?

「い、今、喋ってた、よな?」

「喋ってたというよりも、声を出したって感じだったけど」

「いや、お前。それだけでも十分驚きだろ」

 急に教室内がざわつき始めた。

 心野さんが喋ったことに。声を発したことに。

「ご、ごめんね驚かせちゃって。い、いやね、席替えしてからまだ挨拶したことなかったなあって思って。それで話しかけたんだ。……迷惑だったかな?」

「そ、そんなことは、ない、です……はい……」

 そう言いながらも、心野さんは両手で長い前髪を掴み下に引っ張って、いつもより顔が見えないようにしてしまった。

 に、しても不思議だ。

 緊張はまだ若干はしているものの、女性恐怖症である僕が、いつもよりも普通に喋ることができている。

 でも、どうして心野さんは僕に対してちゃんと会話をしてくれたんだろう。

「そ、そっか、それなら良かった。あ、ぼ、ぼぼ、僕の名前は但木――」

「し、知ってます。た、但木勇気さん、でしたよね……?」

 心野さんはこっちを見ず、まだ前髪を両手で掴んだままだけど、僕の名前を声にしてくれた。意外な展開だ。

「心野さん、僕の名前覚えてくれてたの?」

「は、はい、入学式の時の自己紹介で……」

  え!? あの時の自己紹介で僕の名前を覚えてくれていただなんて。ビックリだ。ビックリだけど、それ以上に嬉しくてたまらない。

「す、すごいね心野さん。もしかしてクラスの皆んなの名前も?」

「は、はい。い、一応は覚えてます……はい……」

 ものすごい記憶力だな、心野さんって。でもこの流れ、悪くないぞ。なけなしの勇気を振り絞って話しかけて本当に良かった。

 それに、緊張感の方も少しずつ解けていくのを感じるし、今なら自然体で会話を続けられるような気がする。

 ほんの一握りの小さな小さな自信。そして、希望が湧いてきた。

「おーい、但木ー!」

「うおっ! ビックリした……。いきなり大きな声で話しかけてくるなよ!」

 どこからともなく現れたコイツは友野はっちゃく。この名前、あだ名でもなんでもなく、本名なのだ。親父さんが好きな漫画のキャラの名前を付けたらしい。

「いやいや、ごめんごめん。お前が心野さんのことをナンパしてたからつい」

 「な、ナンパ?」

「え!? な、なななな、ナンパ!!?? え!? 但木くん、わ、わ、私のようなミジンコ以下の人間に、な、ナンパしてくれたんですか!?」

 ミジンコ以下とか……。そこまで自分を卑下することはないでしょ。いや、今考えるべきことはそこではない。

「友野! 僕がナンパなんかするわけないだろ! 心野さんからあらぬ誤解を受けちゃったじゃん!  知ってるだろ!  僕は女子が苦手だってことを!」

「ああ、知ってるよ。当たり前だろ。中学の時からずっと同じクラスだったんだぜ? お前のことは誰よりも知ってるし理解してるよ。でも、驚いたぜ。但木が心野さんと話してるからさ。女性恐怖症のお前がだぜ? そりゃ俺だって話しかけに来るってもんだ」

「友野……ちょっと邪魔しないでくれるかな? 僕は今、心野さんと話して……って、こ、心野さん!? どうしちゃったの!?」

 心野さん、机に突っ伏したままだらーんと両手を投げ出したまま微動だにしない。本当にどうしちゃったの!?

「お父さん、お母さん……私は生まれて初めてナンパされちゃいました……。我が生涯に一片の悔いなしです……」

「ナンパじゃない! ナンパじゃないって心野さん!」

「ああ……こんなミジンコ以下の私がナンパされるだなんて……。これで私、リア充の仲間入りです。あ、三途の川が見える。去年亡くなったひいお婆ちゃんが手招きしてる。今からそっちに行くね、お婆ちゃん」

「待って心野さん! 話をちゃんと聞いて! ナンパじゃないってば! だからこっちの世界に戻ってきて! というか心野さんは今、一体何が見えてるの!?」

「ふふ……うふふふ……」

 か、完全に自分の世界に入ってしまってる……。しかも笑ってるし。色んな意味でちょっと怖いんですけど。

「ぶわっはっはっは! 心野さんってこんなに面白い人だったんだな。一度も会話できたことがなかったから知らなかったけど。いいんじゃね? ナンパってことで。二人ともお似合いだと思うぜ」

「友野……この状況を見て笑えるお前、すごいよ」

 ――結局、心野さんは全ての授業が終わるまでずっとこのままだった。

 帰る時も「ナンパ……ナンパ……」と呟きながらフラフラと教室を出て行ったし。

 あれでちゃんと帰れるのかな……。

【続く】

Continuez à lire ce livre gratuitement
Scanner le code pour télécharger l'application

Dernier chapitre

  • 心野さんのココロノさん 〜青春を取り戻したい少女が『世界』を創り出すまでのちょっと不思議なラブコメ〜   エピローグ

     僕と心野さんは今、浴衣姿でお茶を飲んでくつろいでいる。畳の藺草の香りを心地よく感じながら。 一体どこにいるのかって? 今、僕達がいるのそこは熱海の旅館だ。 音有さんが僕に手渡してくれたチケットは、この旅館の宿泊チケットだったのだ。 高校生同士の場合、親の承諾書が必要なのでちょっと一悶着あったけれど、なんとか無事に許可をもらえて泊まることができた。「はあー。落ち着きますねえ」「そうだね。音有さんには、今度しっかりとお礼をしなきゃね」 あの夜の後、心野さんはバッサリと前髪を切ったことで髪型が不格好になってしまった。なので美容院に行ったそうだ。髪を切るのも美容院に行くのも数年振りだったらしく、えらく緊張したらしい。 だから今、僕の目の前に座る心野さんは前髪パッツンのボブカットになっている。うん、ほんとパッツンさんみたい。「あ、あのですね、但木くん。ここ、貸し切りの露天風呂があるみたいですよ?」「そうなんだ。まあ、僕達には関係ないけどね」「……そうですよね」 その間は何? しかも何故かシュンとしてるし。高校生同士で、しかもまだ付き合って数日しか経っていない僕達が一緒に入れるわけがないじゃないか。 でも、もしかして心野さん、貸し切りの露天風呂に僕と入りたいと思ってる? まあ、さすがにそれはないか。 という僕の考えは甘かった。 それからも心野さんは事あるごとに「貸し切り露天風呂があるいたいですよ?」と言ってきた。合計すると、十四回も。 そして豪華な夕食を堪能した後、まさにそれについての会話をすることに。「ね、ねえ但木くん。その……貸し切り露天風呂が」 はい、これで十五回目。「あの、心野さん? どうしてそこまでして僕に勧めてくるの?」「い、いえ、その……せっかくですし。それに、但木くんの裸……いいえ、なんでもありません……」 今、僕の『裸』って言わなかった? いや、あの夜を境に心野さんは積極的になったわけだけれど、なんというか……。「というわけで、貸し切り露天風呂があるみたいですよ?」 じゅ、十五回目ですか……。というわけでの意味もよく分からないし。 まあ、積極的になったのは良いことだ。でも、今回に限ってはベクトルが違う方向に向いてると思うんですけど。 そういえば、心野さんってムッツリスケベなんだった。うん、言い切ることができる

  • 心野さんのココロノさん 〜青春を取り戻したい少女が『世界』を創り出すまでのちょっと不思議なラブコメ〜   最終話 恋する乙女の最終決戦【3】

    「もういい加減にして!!!!」 まるで世界中に届くのではないかと、轟くのではないのかと。そう思える程に大きくて、彼女の全魂が込められた力強い声だった。 声の主は、僕が恋をした大好きで大切な人。 心野雫さんだ。「あらー。お久し振りー、ココちゃん」「やめてください。アナタにその名前を呼んでほしくはないです」 心野さんは歩み寄る。ココロノさんの所へ。 僕の勘は当たっていた。やはり心野さんはココロノさんのことを知っていた。事情も理由も分からないけど、それだけは確かだ。「どうして但木くんを狙ったんですか? 前みたいに手紙を書いて、直接私を呼びつければ良かったじゃないですか」「いやいやー。だってさあ。あの時ココちゃん、話してる途中なのに逃げちゃったじゃないの。だから今回も、呼んでも同じことになっちゃうんじゃないかなって思ってねー。でしょ? すぐに現実から逃げちゃう弱虫のココちゃーん?」「……私の呼び方を変えるつもりはないみたいですね」「いいじゃんいいじゃん、呼び方くらい。そういう細かいことばっかり気にしてるから成長しないんだって。少しは学ぼうねー」「成長していないことは認めます。だけど、呼び方くらいってなんですか? そのあだ名は私の大切な幼馴染が付けてくれた宝物のようものなんです」「へー、大切な人ねえ。でも、そんなに大切な幼馴染ちゃんのことを無視し続けてたのはどこの誰だったっけなー?」「……それも認めます。全部認めます。私の弱さも、情けなさも、弱虫なところも、全部。でも、私は変わります。絶対に変わってみせます。そう、決めましたから」 その言葉を聞いて、僕は口を挟みそうになったけど、やめた。『全部認める』とハッキリ言い切った心野さんは、何かしらの決意を持ってここに来て、そして言葉にしたんだ。邪魔はしたくない。 今の僕にできることは彼女を信じることくらいだ。「ふーん、そうなんだ。全部認める、ねえ。でも、こうして私がまた出てきてここにいるってことは、結局何も変わってないんじゃないのー?」「そ、それは……」「あ、一応言っておくけど、前だって最初にオトちゃんを呼んだんだよ? それを伝える前にココちゃん逃げちゃったから知らないと思うけどさー」「そ、そうだったんですか?」「うん、そう。でも、オトちゃんはただのイタズラメッセージだと思ったみたいで無

  • 心野さんのココロノさん 〜青春を取り戻したい少女が『世界』を創り出すまでのちょっと不思議なラブコメ〜   第31話 恋する乙女の最終決戦【2】

     パッツンさんから送られてきたであろうメッセージに記載されていた時刻は、日付がちょうど変わる午前0時だった。意味としては全く違うのに、何故だか『逢魔時』という単語が頭の中でチラついた。 指定された場所はこの前と同じ公園。 それにしても、こんな時刻に高校生である僕を呼び出すとは。人として大丈夫なのかと不安を感じざるを得ない。「全く。親にバレないように家を出てくるのだって大変なのに。パッツンさん、一体何を考えてるんだよ」 僕は歩を進めながら、愚痴を吐き出す。ハッキリ言って、このメッセージを無視することだってできた。だけれど、僕は行く。いや、行かなければならない。 確信しているからだ。 これは絶対に、心野さんと関係しているということ。そして、きっと彼女のためになるはずだということを。 それに、音有さんが言っていた。心野さんが『全てを元に戻したい』と話してくれたと。だったら僕も協力する。力になってやる。心野さんは何かしらの覚悟を決めたに違いないから。 そして、僕は到着した。この前とは違い、パッツンさんはすでにいて、ベンチに腰掛けて僕のことを待っていた。「あ! 良かったあ、ちゃんと来てくれた。待ってたよーん。私の大切な但木くふーん」 な、なんかこの前よりも馴れ馴れしさがパワーアップしている気が……。というか、リアルで『くふーん』とか使う人に会ったの初めてだよ。 それにしても、街灯に照らされてハッキリと見えるパッツンさん。本当に可愛いな。可愛すぎる。 でも、やっぱり不思議だ。 前回もそうだったけれど、ここまで可愛い女子を目の前にしたら、緊張して絶対に女性恐怖症が発動するはずなのに。それがないんだ。不思議を通り越して、もはや奇妙と言っていい。「すみません。時間通りには来たんですけど待たせちゃったみたいで」「いいのいいのー。私が勝手に早く来ただけだから。それにしても他人行儀だなあー但木くんは。もっとフレンドリーに接してくれていいのよん」「いえ、その……癖と言いますか。それにまだ、パッツンさんにお会いするのも二回目ですし。いきなりフレンドリーには……」「えー、なんでまだパッツンさんって呼ぶの? この前、帰り際に教えたじゃん。私の名前。心野雫だって。雫ちゃんって呼んでいいのよん」「……分かりました。じゃあ、『ココロノさん』って呼ばせてください」 

  • 心野さんのココロノさん 〜青春を取り戻したい少女が『世界』を創り出すまでのちょっと不思議なラブコメ〜   第30話 恋する乙女の最終決戦【1】

     僕に届いた差出人不明のメッセージ――恐らく送り主はパッツンさん――には、幸いにも『明日の夜』と書いてあった。この前は届いたその日の夜に呼び出されたので何の準備もすることができなかった。 だが、今回は違う。 それに、恐らくだけど、この件に関して心野さんは何らかのことを知っている。あの時の反応を見て、それは分かった。 だから僕は学校に到着したら、少しでもいいから心野さんと話しをしたかった。彼女との会話の中で手がかりになる情報を得ることができるかもしれないと期待していたから。 しかし、それは叶わなかった。 心野さんは本日、珍しいことに学校を欠席していたからだ。 だけど、その代わりにビックリすることが起きた。教室に入り、自分の席に着くや否や、音有さんが興奮気味に僕に話しかけてきたのだ。「ねえ但木くん! 聞いて聞いて!」 この一言で、教室中が一気にざわついた。考えてみたら、音有さんが僕に話しかけるところをクラスメイトの皆んなは初めて見たわけで。そりゃ驚くよね。僕が女性恐怖症であることは周知の事実だから。 にしても……皆んなからの視線、特に女子からの視線がやっぱり怖いよ! 多少マシになったとはいえ、この女性恐怖症はまだ完全に克服できたわけではないみたいだ。いやはや、情けない……。「ど、どうしたのでござるか」 あー、周りを気にしすぎて音有さんにまで武士みたいな口調になってるし。どうして僕、こうなるのかな……。「あ……ごめんね。そっか、女性恐怖症発動させちゃったみたいね。そりゃそうだよね。クラスの皆んながコッチをすごく注目して見てるもん。誰もいないところで話すべきだったかな」 発動って。まるで特別なスキルみたいに言わないでほしいんですけど。「だ、大丈夫でござるよ……」「うーん、全然大丈夫じゃないような……。うん、じゃあ聞くだけでいいからね。返事は無理はしないでいいから。あのね、昨日の夜にココちゃんから電話があったの!」 ……え!?「こ、ココちゃんって! それって心野さんからってことですよね!?」「あらあら。一気に元に戻った」「あ、本当だ」「うふふ。但木くんってほんと、ココちゃんのことになると別人みたいになっちゃうよね」「そ、それはいいですから! 音有さん、続きを聞かせてください!」「うん、了解! でね、ココちゃんとお喋りしたの。何年振

  • 心野さんのココロノさん 〜青春を取り戻したい少女が『世界』を創り出すまでのちょっと不思議なラブコメ〜   第29話 心野さんは知っていた

     僕と心野さんはファミリーレストランを出た。 とは言ってもすぐではない。心野さんが大量の鼻血を出してしまったせいで、貧血を起こしてしまって意識が朦朧としてしまっていたから。 それで、大体三十分後くらいかな。彼女の意識がはっきりしてからお店を出た。さすがにふらふらした状態で店外に出るのは危ないし。 で、ざわめく店内の様子で気付いたのか、女性の店員さんが鼻血を拭きに来てくれた、のだけれど……。「あららー、またですか」と言いながら笑顔で対応。以前もこのお店で心野さんは鼻血を出したわけで。で、その時に対応してくれたのもこの店員さnだった。でもさ、この人適応力高すぎだでしょ!「心野さん、もう大丈夫?」「あ、はい。また但木くんに迷惑かけちゃって……ごめんなさい」「謝らなくても大丈夫だよ。あと鼻血もそうなんだけど、胃の方は大丈夫? あれ、さすがに食べ過ぎだと思うんだけど……」「胃ですか? 全然問題ないです。美味しかったですから」 人間って、美味しかったらいくらでも食べられるというわけではないと思うんだけど……。心野さんって、実は結構な大食漢? そんなことを考えながら、僕と心野さんは歩く。ファミリーレストランを出た時には、もうすっかり夜になってしまった。春とは言っても、昼間はあんなに暖かったのに、やっぱり夜はまだ肌寒い。「そ、そういえば但木くん。あ、ああ、あの、さっき私に言ってくれたこと、ほ、本当に本当なんですか?」 言葉に恥ずかしさを添えて、心野さんは言う。『付き合うんだったら、僕は心野さんがいいな』 そう。僕は確かにそう言った。でも、我ながらヘタレだな。僕は心野さんに恋をしているのだとようやく理解ができたというのに、なんというか、上手く言えない。伝えられない。 だけど、キッカケは確かに作ることができた。僕はゴールデンウィークに入って心野さんと一緒に遊びに行ったら、その時にしっかりした形で告白をするつもりだ。 そう、決意したんだ。「うん、本当本当。その通り」「……但木くん? なんか軽すぎません?」「いいじゃん別に。ゴールデンウィークに入ったらしっかり伝えるよ」「えーと……あ、あの、ま、待ちきれないんですけど……」「ダメ。おあずけ」「おあずけって……私、犬じゃないんですから!」「そっか。じゃあ今だけは犬になってよ」「嫌ですよ! ちゃ

  • 心野さんのココロノさん 〜青春を取り戻したい少女が『世界』を創り出すまでのちょっと不思議なラブコメ〜   第28話 解けた誤解

    「ありがとうね、心野さん。付き合ってもらっちゃって」「いえ、別に……」 心野さんは約束通り、放課後にちゃんと僕に付き合ってくれた。そして今、僕達はファミリーレストランにいる。そう。あの時と同じお店だ。 なんだか遠い昔のことのように思える。つい最近のことのはずなんだけど。不思議なものだ。 でも、今はこの前とちょっと状況が違っている。心野さんに元気がないということだ。喋ってくれても蚊の鳴くように小さな声だった。 さて、どうするべきなのか。それを考えていた。色々と順序立てて考えてはいるんだけど、正直なところ、その順序が頭の中でこんがらがってしまって、上手く整理ができない。 でも、まずはこれかな。「……どうしたんですか、但木くん?」 僕は席を立ち、できるだけ心野さんに近付いた。そして床にぺたりと座り込み、正座。そのまま、両手を床について、頭を下げた。 THE・土下座である。「え!? え!? た、た、但木くん!? ど、どどど、どうしたんですかいきなり!?」 慌てふためく心野さんだったけど、これが僕が考えた末の、最大限の謝罪の仕方だった。これでも反省しているのだ。心野さんを、僕は傷付けてしまったのだから。「心野さん! 本当に、本当にごめんなさい!!」「……へ?」 ものすごく感じる、周りにいるお客さんの視線を。それはもう痛い程に。でも、そんなことを気にしている場合じゃない。場合じゃないんだけれど……。さっき、心野さんが『へ?』って言わなかった? どういう意味なんだろう。もしかして、『そんな土下座程度では許しません』的な感じ? まあ、そんなの関係ない。僕は謝るんだ、心野さんに。心の底から。「心野さん! 傷付けちゃって本当にごめんなさい! 具合が悪いって言ってたのに、先に帰しちゃったりして。一緒に帰るべきでした。送っていくべきでした。本当に、本当にごめんなさい!!」「……へ!? へ!?」 あれ? やっぱりさっきと同じ反応だ。『へ!?』の数がひとつ増えたけど。「た、但木くん! あ、あのですね、何か勘違いしてます!」 勘違い?「あ、あの、聞いてください! 違うんです! そ、そ、そうじゃないんです! ただ単に、私が弱かったんです! それに、こ、こ、こここ、怖かったの!」「こ、怖かった……?」「うん、そう。怖かったです……。但木くんが、私から離

Plus de chapitres
Découvrez et lisez de bons romans gratuitement
Accédez gratuitement à un grand nombre de bons romans sur GoodNovel. Téléchargez les livres que vous aimez et lisez où et quand vous voulez.
Lisez des livres gratuitement sur l'APP
Scanner le code pour lire sur l'application
DMCA.com Protection Status